ラグビーのタックルは、おそらくあなたが想像しているよりもずっと大きな衝撃をもたらすものです。

これまでに触れてきたようにきちんと基礎トレーニングで身体づくりをし、正しい形で行えばそう問題はありませんが、油断をすると危険を伴うことになります。

ここでは、タックルの衝撃がどういうものなのかについて考えてみましょう。


1.ハンマーで叩かれるような衝撃

ご覧になったことがある方もいるかもしれませんが、海外のあるテレビ番組で、ラグビーのタックルがどれほどの衝撃なのか実験したものがあります。

ラグビーではタックルを受ける際にいろいろな体勢が考えられますが、最も危険なのは、いわゆる「ホスピタルパス」という状態になるときです。

これは、味方からのパスを受けようとして手を伸ばし、パスを受けた瞬間にタックルされるような状況で、しかもすぐにタックルを受けることを認識できていない、全く無防備な状態です。

番組では、この状態でのタックルを想定して実験を行ったわけですが、なんとこのときタックルされるプレイヤーが受ける衝撃は、770キロでした。

これは当たられたときの衝撃で、タックルにはもちろんこの続きがありますね。

そのままグラウンドに倒される時にも衝撃を受けるわけですが、グラウンドにたたきつけられる時の衝撃は900キロほどだったそうです。

番組上では、「二つのハンマーで二回もたたかれるようなものだ」と表現しています。

つまり、病院に送られることになってもおかしくないということで、この状態を「ホスピタルパス」と呼ぶようになったのです。


2.衝撃を上手く受け止めるには

非常に怖い話をしてしまいましたが、逆に考えれば、ラグビーをするということはこうした衝撃ときちんと向き合うことであり、またその衝撃に対処することも行われている、ということでもあります。

タックルされるときに、衝撃を上手く受け止めるうえで重要なことは、「素早く身体を固める」ことです。

身体を固めるために必要なのは、腹筋や背筋など「体幹」と呼ばれる筋肉群を鍛え、かつ瞬時に固める練習をすることです。

相手の衝撃を上手く処理することができれば消耗する体力も最低限に抑えることができ、ラグビープレイヤーとしての上達には欠かせない要素ともいえます。


3.体幹を固める練習

体幹は四六時中固めていると動きがぎこちなくなりますから、当たる瞬間にグッと固めるのが理想です。

練習パートナーにダミーを持ってもらい、いろいろなタイミングで当たってもらうのも良い練習になります。

力を抜いている状態から、当たられる瞬間にだけ力を入れて身体を固めてみましょう。

慣れてきたらダミーを持つ人を3人くらいにして、プレイヤーを囲むようにしてさまざまな方向からランダムで当たりに来てもらうとより実践的です。


4.おまけに:アメリカンフットボールの衝撃と比較すると?

上記の番組では、アメリカンフットボールのタックルの衝撃と比較するデータもありました。

アメリカンフットボール選手の一撃は、時速56キロで壁に衝突したのと同程度の衝撃で、約2トンの力になるそうです。

これは上記のラグビーのタックルで実験した数値の2倍を超す値です。

ただ、アメリカンフットボールは防具を着けており、広い範囲に力を拡散するため、一か所に加わる力はラグビーの方が大きいとも言えるようです。

ラグビーのタックルの衝撃がハンマーに似ているとは、こういうことなのですね。