スポーツでは、技術と同じかそれ以上にメンタルが大切だと言われています。

どんなに良い技術を身に着けていても、どんな状況においてもそれを十分に発揮できる強いメンタルがなければ役に立たないからです。

このシリーズでも、恐怖心を克服するだけでタックルは上達するということをお話ししましたが、ラグビーにおいてはコンタクトが伴う分、メンタル的な要素はプレーに大きく影響します。

ここでは、メンタルトレーニングについて触れていきますが、その特性上、実際のトレーニングは専門家の指導の下でおこなわれるべきものですので、その点はご理解のうえお読みいただきたいと思います。


1.最悪の状況から立て直すことをイメージする

メンタル面を鍛える方法は、専門家によって様々な方法がありますが、方向性はほぼ二つです。


・大成功したことをイメージする

・最悪の状況に陥ったときのことをイメージする

このどちらかを実践するパターンがほとんどのようです。

まず、最悪の状況をイメージする方から見てみましょう。

実は筆者も、学生時代にこれを実践したことがあります(もう20年も前のことですが)。

実際、試合中に劣勢になりつつあっても、精神的には落ち着いていられたという経験がありますので、一定程度の効果があったものと考えます。

もちろん、ラグビーの上達という点でも役立つものです。

まず、具体的な場面を設定します。

あまり絶望的なものを考えても仕方ないのですが、本当に最悪の状況と、非常に難しいけれど乗り切れば逆転できるかもしれない、という状況を設定しておきます。


1.何をやっても上手くいかず、大差で負ける状況

ライバル校とラグビーの試合で対戦していることをイメージしてください。

そして、何をやっても上手くいかない状況を自ら考えだします。

例えば、あなたがスタンドオフだとして、「スクラムから出されるボールを毎回ノックオンする」「パントをミスキックして相手にトライされる」「タックルが全く決まらない」など、考えられる限り最悪の状況に自分があると仮定して、試合がどうなっていくかを勝手にシミュレーションするのです。

この想定の肝は何かというと、人間は自分にとって嫌な状況のことを考えたくないもので、でもそれが実際に起こってしまうとひどく動揺することを利用し、事前に最悪の状況をイメージして疑似体験しておくことで、実際の試合中に何が起こっても「この間のあの状況よりはマシ」と無意識に処理できるようになる、ということです。

つまり、メンタルという点で、耐性が着くということなのでしょう。

イメージするのはなかなか難しいでしょうが、最近はこの方法を取り入れるチームも増えているということです。

2.「全国高校ラグビー選手権の県予選大会、決勝戦。後半残り5分、12点差(2トライ1ゴールで同点)、敵側22メートルライン付近で自分がノックオン。相手スクラムで再開」という状況を想定

最初の例よりももう少し希望が持てる状況です。

この時点で、普通に考えればほぼ負けは確実と言えますが、ここから逆転するにはどういう展開が考えられるか、自分なりに考えるのです。

それが上手くイメージできれば、実際のラグビーの試合で不利になっても、少なくともその状況までは必ず逆転する方法がある、と落ち着きを取り戻す強いメンタルを手に入れることができるようになると言われています。


2.大成功をイメージする

先ほどの例とは反対に、「何をやっても上手くいく」という状況をイメージするのも、メンタルトレーニングのひとつです。

とはいっても、実際の試合などをイメージすると、なかなか良いイメージを作ることは簡単ではないことに気付くと思います。

良いイメージをパッと思い浮かべられるようになることで、試合中にもメンタル的な希望を作ることができ、心を落ち着かせることができるようです。


3.普段の練習でも

普段の練習をイメージするトレーニングももちろん可能です。

例えば、なかなかタックルが上手く身に着かず、上達しないという場合があるとします。

ラグビーのタックルでは恐怖心を捨て去ることが最も上達に近いといいましたが、具体的な練習のシーンを思い出して、そこで鋭いタックルに入れている自分を繰り返しイメージするのです。

やがてそのイメージに沿って身体が動くようになり、メンタル的にも不思議と恐怖心を感じなくなってくる瞬間があります。

普段の練習メニューをしっかりこなすためにも、メンタルトレーニングは有効に働くと言えそうです。


4.まとめ

冒頭にも言いましたが、メンタルトレーニングは非常に繊細な要素があるため、出来る限り指導者の指示の下で行ってほしいものです。

ただ、それができないチームもあるでしょうから、その場合はメンタルトレーニングの本などを熟読して、取り入れてみてもいいでしょう。

ラグビーの上達に、メンタル的な要素も考慮する必要がある。

まさに、最近のスポーツシーンならではです。