ラグビーの試合を見ていて、誰しも思ったことがあるはずです。「スクラムとは、いったい何のためにやるのだろう」と。
あの広いフィールドで、一カ所に密集してボールを獲り合い、押し合うことにはどんな意味があるのでしょうか。
1.ラグビーは「ボールの奪い合いが全て」
まず知っておくべきは、ラグビーとは常に「ボールを奪い合いながら、相手ゴールまでボールを運ぶ」競技だということです。
ラグビーに限らず、「フットボール」と名の付くスポーツの原点は「お祭り」です。
以下、とても簡単に説明すると…
中世のイングランド地方では、昔からの祭りを引き継ぐ形で、ボールをどちらが先に相手陣地の一番奥まで運べるか、という対決をしていました。
対決チームも「あっちの村 対 こっちの村」のようなくくりで、人数も明確には決まっておらず、何百人という単位で参加しているものもあったようです。
とにかく村対抗でボールを奪い合い、そのためには当然殴り合い蹴り合うという、とても乱暴かつ人間臭いものだったそうです。
得点の方法は村によって違うようですが、だいたいが「一点先に取ったら勝ち」というところは共通していたようですね。
こういうものがそもそもの起源ですから、「まず何が何でもボールを奪い取る」「奪い取ったボールをとにかく早く敵陣の奥まで運ぶ」という要素が、ラグビーにも残されているということになります。
そろそろお分かりかと思いますが、その「ボールを奪い合う」という行為が、実はスクラムなのです。
反則の後のプレー再開がスクラムなのは、常にボールを「奪い合う」というところからこのスポーツが始まるからで、ラックやモールは、流れの中で発生する、形を変えたスクラムだと思ってください。
つまり、ラグビーというスポーツは、試合時間の間中、とにかくボールを力ずくで奪い合うということを繰り返す競技である、という意味に解釈することができます。
こうしたことを理解しておくと、技術の上達にも一役買うかもしれませんね。
2.押すことに意味はあるのか?
これもよく聞かれるのですが、「あの広いフィールドで、スクラムで数メートル押すことに意味があるのか」「さっさとボールを出してしまったほうがいいのではないか」と疑問を持つ人も多いようです。
実はスクラムは基本的に第一列と第二列の力がモノを言うのですが、押されているスクラムでは、第三列がスクラムを支えることになります。
第三列は機動力が大切ですから、彼らがスクラムで押さねばならないとなると、その後の機動力が大きくダウンします。
守備のときも同じで、スクラムサイドへの攻撃に対し、タックルが遅れてしまいます。
また、スクラムはルール上いくらでも押すことができますので、力の差がありすぎると、スクラムで押されたままいつの間にかゴールラインを割っている、ということもあり得るのです。
さらに、スクラムのときにはオフサイドラインがスクラム最後尾の選手の足になります。
スクラムが押されるということは、オフサイドラインごと下がり続けることになり、守備側のバックスの動ける範囲が狭くなっていくことを意味します。
3.まとめ
いかがでしょうか。
ラグビーにおいては、まずボールを奪うことから始まるという意味を考えると、スクラムはまさにそのための行為であることがわかります。
同時に、ラックやモールも同じ意味を持ちます。
ラグビーの持つ激しさ、猛々しさを象徴するのがスクラムだとお考えいただくと、だんだんその意味も分かってくると思います。
スクラム自体も、力と力のぶつかり合いですから、じっくり見るととても見ごたえがありますよ。
何よりプレイヤーの皆さんには、それぞれのプレーの持つ意味をよく理解することがラグビーという競技の理解につながり、上達する上でも実は重要だということをお分かりいただけたのではないでしょうか。