ラグビーでは、試合中にボールの蹴り合いになることが多くありますが、基本的に手からボールをドロップしノーバウンドで蹴るキックを総称して「パントキック」と呼びます。
ただ、その目的によって、蹴り方も変わればボールの落とし方も変わり、したがってボールの飛び方もまったく違うものになります。
戦略的に使い分けることで、ゲームを有利に進めることができますので、パントキックの種類ごとに詳しく見ていきましょう。
1.通常のパントキック
スクリューキックの蹴り方のコツの記事で、スクリューキックを説明しました。
通常、蹴り合いのときやタッチキックの時は距離を稼ぐことが重要ですので、このスクリューキックを含めたパントキックを蹴ることが最も多くなります。
蹴り方はスクリューキックで説明した通りですが、結果的にスクリューがかからなくても、足の甲のできるだけ広い面積でミートし、思い切り、かつ滑らかに蹴り足をフォロースルーすることを意識しましょう。
キックパスのときは、蹴り足の強さを調節してボールを落とす位置や軌道を調整します。
これは日常の練習で走りながらパントキック蹴るなど、意識して練習すれば必ず上達するはずです。
2.ハイパント
ラグビーの試合中によく使うもう一つのキックが、ハイパントと呼ばれるパントキックです。
文字通り、比較的近い位置に高いボールを蹴り上げ、味方にボールを競って取らせることが目的になります。
通常は、スクラムハーフまたはスタンドオフが、スクラムやラック、モールからボールが出た直後に蹴ることが多いパントキックです。
ボールの落下点として狙う位置は、相手のディフェンスラインのやや後ろ、フルバックが前に走ってきてギリギリ取れるくらいのところが良いでしょう。
スクラムやラック、モールからボールが出た瞬間はバックスのディフェンスラインが一斉にこちらに向かって出てくるので、その裏に蹴り込むことでバックフィールドの相手プレイヤー以外は全員オフサイドの位置になります。
その隙に、味方プレイヤーが猛然とダッシュし、落ちてきたボールを獲るという流れです。
3.ボールの落とし方
ハイパントは飛距離をあまり取らず、同時に高く蹴り上げる必要があるので、通常のパントキックとはボールの落とし方を変えたほうが蹴りやすいでしょう。
キッカーは胸の前くらいの高さでボールを立てるようにしてホールドし、そのまま真っ直ぐ落として、ボール先端のやや後ろをまっすぐに蹴り上げるイメージです。
ボールは、垂直に立てるというよりも少しだけ後ろに傾けると蹴りやすくなります。
状況に応じて、少し長めに距離を取ったり、滞空時間を調節したりすることができるようになれば、キッカーとして上達した実感が出てくるでしょう。
4.ゴロパント
正式にはグラバーキックと言いますが、ゴロパントという言葉もわかりやすいのでよく使われます。
これはわざとボールをグラウンドに転がすように蹴るパントキックで、ラグビーボールの不規則な跳ね方を利用して相手がうまく処理できないようにしつつ、あわよくば味方プレイヤーがボールを拾うことも狙えます。
よく、バックスのディフェンスラインの間からゴロパントを蹴り、抜けた先で味方に捕らせるというプレーで使われます。
蹴り方は、ボールをほぼ寝かせたような状態で、腰の高さくらいの低いところで持ち、ボールを落とした後地面に付く直前で、ボールの手前半分を蹴るイメージになります。
こうして蹴ることで、前に転がりながらもあるタイミングで不規則にバウンドするなど、相手にとっては非常に取りにくいボールを蹴ることができます。
5.まとめ
キックパスとしても頻繁に使われるようになるなど、近年のラグビーではパントキックの重要性はますます高まっています。
距離や滞空時間を操るというのもさることながら、キックされたボールが落ちるまたは補給される地点より敵チーム側にいるプレイヤーは全員オフサイドになるという効果を利用して、相手に都合よく動くことを許さないという側面も重視されてきています。
パントキックの上達は、チームの勝利をぐっと引き寄せることに繋がります。
特にスクラムハーフ、スタンドオフのポジションを務める選手は、いろいろなバリエーションで蹴れるように練習しておきましょう。