これまでラグビーのステップが上達する練習メニューや相手をかわすステップのコツの記事でステップについて触れてきましたが、鋭いステップにはその基礎になる練習も必要になってきます。
平たく言えば、俊敏でキレのあるステップを切るには、身体能力としての瞬発力やクイックネスの向上が不可欠だということです。
ここでは、そのために役立つ基礎的なトレーニングについて説明しましょう。
1.俊敏性や瞬発力を高める
ラグビーにおいてキレのあるステップを可能にするには、瞬発力やクイックネス(あらゆる方向に素早く動く能力)を高める練習を日々積み重ねていかなければなりません。
しかも、俊敏性や瞬発力は、毎日とはいいませんが継続していかないとすぐに衰えてしまいます。
瞬発力、俊敏性は、可能な限り一番速いスピードで動かなければ向上しません。
これは、筋力などの要素以上に、その速い動きに筋肉がついていけるだけの調整力、つまり神経系の能力を向上させなければならないからです。
緩い坂道を走って下ろうとすると、やがてスピードが上がってきて足がもつれるようになる、そんな経験はありませんか。
これは筋力の問題ではなく、味わったことのない速い動きを筋肉の神経系が制御できなくなるからです。
よって、以下に紹介する練習は、一日の練習の中でもあまり疲労していない時間帯、できればウォーミングアップのすぐ後に行うのが良いとされています。
2.反復横跳び
小学校、中学校の体力測定でもおなじみの反復横跳びです。
これは、横方向にいかに素早く動けるかを測る種目ですが、トレーニングとしても優れています。
1メートル間隔程度の線を3本引き、一定時間内、全力で素早く横に跳びながら往復する動きを繰り返します。
スピードが落ちるとあまり意味がなくなるので、10秒間程度を3~4セット行うと良いでしょう。
3.シャトルコーンタッチ
練習者を真ん中にして、その周りに半径1メートル程度の円を描き、その上にコーンを8つ置きます。
コーンは、前後、左右、斜め45°の前後左右に置きます。
円の外、練習者の前にシグナルコーラーを置き、シグナルコーラーは指で一つコーンを指します。
練習者は指されたコーンに素早くタッチし、真ん中に戻ります。
シグナルコーラーは、練習者が真ん中に戻る直前に別のコーンを指し、これを繰り返します。
これもあまり疲労して速度が落ちると意味がなくなるので、10回を目安にし、3~4セット行いましょう。
ちなみに、練習者は円の真ん中に戻る前にシグナルが出されても、必ず中心のスタートポジションに戻ってから指されたコーンに向かいます。
注意点としては、腰をできるだけ落とし、上半身はできるだけ前を向いた状態で、下半身を柔軟に回転させて移動することです。
これが素早くできるように上達してくると、ステップのキレが目に見えて出てきます。
4.ラダードリル
今ではラグビーに限らずほとんどのスポーツチームで取り入れていますが、ラダー(ハシゴ)を使った足の動きのトレーニングです。
様々なパターンがありますが、これらを練習することによって普段なかなかしないような足の動きが可能になり、ラグビーのステップにおいてキレを出すには特に有効な練習だと言えます。
ここで細かく紹介するには難しいのですが、ハシゴを1マスずつ足を入れながら前にダッシュする、後ろ向きに走る、横に走るなど、いろいろなバリエーションがありますので、興味のある人は関連のDVDなどを探してみてください。
5.ミラードリル
反復横跳びの応用版ですが、これは二人で行う練習です。5メートル間隔の線を引き、二人が向かい合います。片方が先に動く役、もう片方はそれに付いていきます。
先に動く役のほうは、できるだけ相手がついてこれないように、5メートルの範囲の中で右に左にととにかく動き回ります。
ついていく方は、置いていかれないように相手と同じ動きをしながら食らいついていきます。
10秒間ほどの動きを3セットほど行いましょう。これが上達してくると、動きにキレが出てきたことをいろいろな場所で実感するはずです。
6.まとめ
ラグビーでキレのあるステップを必要とするのはバックスがメインだと思われがちですが、これまでも説明した通り、フォワードも出来て損はありません。
ぜひ、日々の練習に少しずつ取り入れ、基礎的な能力を向上させていきましょう。くれぐれも、疲労がない状態で最高速度で動けるときに練習を行うことを忘れずに。