ラグビーでは、反則が発生すると、反則をされた側のチームにフリーキックまたはペナルティキックの機会が与えられます。
ペナルティキックは比較的重い反則に対して与えられるもので、レフェリーは笛を吹くと同時に、キックを与えるチームの方(反則したチームではない方)の腕をまっすぐに上に挙げます。
ここでは、ペナルティキックについて見てきます。
1.キックを蹴らない選択肢も
ペナルティキックを与えられたチームは、様々な選択肢の中から最も有利な方法を選ぶことができます。
「ゴールを狙い、3点を取りに行く」「アウトオブバウンズ(タッチライン外)に蹴り出し、マイボールラインアウトで試合再開」「その場で軽く蹴り、プレーを展開する」というのがほとんどですが、スクラムに自信があるチームは「マイボールスクラム」という、キックを蹴らない選択肢もあります。
2.ゴールを狙う(入れば3点)
2015年ラグビーワールドカップでの日本代表・五郎丸歩選手の活躍もありましたが、反則地点が敵陣であれば、反則地点またはその延長上からのプレースキックで3点を狙う場合がほとんどです。
この精度が高いほど、相手にとっては「反則=3点失う」というプレッシャーが強くなり、精神的に優位に立つことができます。
3.タッチ外に蹴り出す
普通、タッチ外に直接蹴り出す場合は自陣22メートルラインに入っているかどうかが重要ですが、ペナルティキックの場合は、どの地点から蹴り出しても、マイボールのラインアウトを取ることができます。
ラインアウトの攻防で自チームに分がある場合は、この選択肢を選ぶのが定石です。
よく見かけるのが、相手ゴール前で相手が反則を犯したとき、ゴールラインぎりぎりのところにボールを蹴り出し、そこからマイボールラインアウト、そしてモールを押し込んでトライ、というシーンです。
攻めている方も攻められている方も、どちらも緊張感あふれるシーンですよね。
ワンバウンドして外に出てもいいのですが、飛距離が足りず選手にキャッチされてしまったらもちろんそのまま相手のボールになるのでご注意を。
また、まれに風などの影響で蹴り出す位置が思ったほど伸びないこともよくあります。
タッチキックを上達させておくことは、ペナルティキックでチームを優位に立たせる最低限の条件ですから、キッカーはしっかり練習しておきましょう。
4.その場でちょこんと蹴ってプレーを展開する
試合展開によっては、選手がボールを自分の足にちょこんと当てて(俗に言う「ちょん蹴り」)そのままボールを保持し、プレーを続けるシーンも見かけたことがあるでしょう。
ラグビーでしか見かけない、独特のプレーでもあります。
キックの定義は「手から完全に離れた状態のボールを足の一部で蹴ること」ですので、ちょん蹴りも立派なキックなのです。
なぜこの選択肢を選ぶことがあるのかと言えば、ラグビーではペナルティキックが与えられた場合、反則を犯したチームのプレイヤーは「反則の発生した地点から10メートル離れなければならない」というルールがあるからです。
つまり、例えば密集地でペナルティキックが発生した場合、キックを得たチームの選手がその場でちょん蹴りしてプレーを再開すると、そこから半径10メートル以内にいる相手チームの選手はプレーに参加できないばかりか、焦ってタックルに行ったりしてしまうと、「ノット10メートルバック」という反則を取られ、再び相手にペナルティキックがあたえられることになるのです。
こういうルールがあるので、例えば攻めている流れの中でペナルティを得た場合は、その流れを活かすためにちょん蹴りでプレーを再開し、相手の守備が整わないうちに攻め込もうという戦略を取ることもできるのです。
5.まとめ
ペナルティキックと言っても、3点を狙うプレースキックだけではない様々な選択をできるのが、ラグビーをより深く面白くしている要素です。
どのプレーを選択するかで、相手よりも格段に優位に立つこともできますが、一方で選択を誤ると不利になることもあり得ます。
テクニックだけでなく、判断力の上達も試合で勝つためにはとても重要です。
将来、キャプテンなどチームのリーダーになろうとするならば、状況によってどの選択肢を選ぶか、常にシミュレーションしておきましょう。